「三陸復興国立公園」  2020.04.〜
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 陸中海岸国立公園は、東日本大震災後の2015年に 三陸復興国立公園 と名称変更され、区域も一部追加されたようです。今後も復興状況jに合わせて名称が改変される可能性があるとのことです。 ここで取り上げるのは、主に岩手の海岸沿いにある景勝地を中心としています。 三陸ジオパークや みちのく潮風トレイル と重なる部分もありますが、その中から興味がわいて行ってみた、所々を報告します。

目次 (下の方が新しい記事です)
1.防潮堤の扉を無くした例  〜山田町大沢
2.北上高地を縦断する林道やトンネル 〜 遠野市・宮古市・岩泉町・葛巻町
3.みちのく潮風トレイルのつまみ食い 〜青森から福島迄続くトレイルコースの、良さそうな所だけをつまみ食いしました
4.タブの大島
1.防潮堤の扉を無くした例
 こちらは山田町大沢にある防潮堤です。右写真はその上から海の方を望んだところですが、オランダ島が見えます。オランダの船が漂着したところらしいです。手前にステンレスの手すりが見えます。また、旧防潮堤でしょうか、壁のようなものも見えますが、津波時には出入り口部分の水門を閉鎖する必要があります。
 右下写真は防潮堤の上から、伸びる方向を眺めたところです。右にある階段を下りて行くと車道の坂道を横切ります。車道が斜めですがほぼ防潮堤と平行に、潮堤を乗り越えていて、堤の内外を繋いでいます。これなら門扉閉鎖の必要はなく、車両が閉門のために逃げ遅れるということがありません。また 3.11 では防潮門扉を閉めることに関連して、幾多の消防団員が使命感から命を失うこととなりました。
 下の写真は陸側から見たところですが、乗り越える階段と、斜めに上り下りできる車道が横切っています。
 航空写真を各社地図サイトで探しましたが、完成が新しいせいか、記入時点でまだ掲載されていません。
(2020.04.05取材) 

2.北上高地を縦断する林道やトンネル 取材日:2020.05.11
 北上高地は最高峰の早池峰山でも1900m台で、さほど険しい山岳地帯では無いのですが、人家の無い谷間をクネクネと延々とアップダウンを繰り返しながらずーっと進むような道が多くあります。
 今回たどるルートは、大部分が「緑資源幹線林道」に含まれていますが、そうではない箇所のトンネルもくぐって行きます。道路のトンネルというと、そこそこ通行量が多くて、距離を縮めるためにトンネルを作ってある例が多いのですが、今回出てくるトンネルは外山トンネルを除いてあまり通行量は多くなく、費用対効果という面で見ると点数が下がるかもしれません。
 右写真は下段の地図 3.タイマグラ の近くから見た早池峰です。
 荒川高原の入口は6か所ほどあります(遠野4、宮古市川井1、花巻市大迫1)。今回は遠野市の国道340号沿い分岐点から荒川高原に入ります。耳切山からのルートに合流するまでは未舗装で、雪が融けてやっと通行できるようになったばかりのようです。(5月上旬) 道は看視舎のある三差路で大規模林道とさらに合流します。
 荒川高原は現在でも一部で馬が放牧されていますが、40年ほど前には放牧地が広がる草原で高原祭りがおこなわれていたこともあります。相当回数キャンプに通いましたが、現在は大部分の草原は植林されてカラマツ林が多くなっています。一ツ石山の頂上にはブロック造りの看視舎がありますが、現在は草原を気楽に歩いてたどり着けるような状態ではなくなっています。
 タイマグラを経てまた上り返すと、左写真のような「木の博物館」の看板が何枚かあり、悠久のみちトンネル(下写真)をくぐり、R106沿いの鈴久名に出ます。

 国道106号を少しだけ走り、道の駅やまびこ館でソフトクリームをいただきながら小休止の後、再び川内から大規模林道を岩泉町へ越えます。害鷹森の西にある鞍部(峠)には、この林道の完成を記念する石碑が立っています。
 こちらにも木の博物館の案内板があり、害鷹森周辺の植生が無い裸地を緑化したことについての説明がありました。でも自然に出来上がった風景を、無理に「回復」させる必要があるのかどうか、もう少し勉強しないとわかりませんが、この大規模林道と同様に経済効果の物差しでは測るのは間違いがあるのかもしれません。
 遠く南方に先ほど越えてきた稜線から繋がる早池峰と残雪が望まれます(上写真)。峠からは北の方へ、急峻な渓谷沿いに高い擁壁を積み上げた上に作った道を、くねくねと釜津田の集落(下段の地図bV)に向かって下りて行きます。イチリンソウがそこにもここにも群落をなしていました。
 こちらの外山トンネル(右写真・Googleマップから))はここで取り上げる他のトンネルと違って生活道路になっているようです。30年余り前にバイクで初めて通りました。この開通前には渓谷沿いに大きく回って近隣の集落と繋がっていたようです。
 少しの間地方道を進んだ後、種倉の集落からまた山越えの大規模林道へ入ります。こちらにも峠のあたりに立派な 金堀トンネル が作られています。こちらのルートは、対向車に工事車両ではない、荷物を積んだ大型車もすれ違いましたので、物流に一役買っているのかもしれません。
 国道340号の穴沢に出る少し手前に金堀清水の看板があって東屋などもあるので立ち寄ってみましたが、樋の底に植物性の生物膜が出来ているようで、限りなく表流水に近い水質と判断されましたので、眺めるだけで次に向かいました。

 国道 340/455 号を少しだけ走って、また岩泉町 門 石畑 の集落から山道に入ります。この道は1車線の所も多く、大規模林道の一部では無いようです。最高所に 奥岩泉隧道 (左写真)があります。銘板に トンネル ではなく、 隧道 となっています。ここを通るのは震災の年、復旧活動に従事のさなか、息抜きに くずまき高原牧場祭り を目指して通って以来です。隧道を抜けて下って行くと、一部で工事中の所もありますが、通行は可能です。安家川沿いの大平の集落(下の地図のbP0)に出ます。水害・氾濫で大きな被害が出た区域でもあり、まだ復旧工事がなされています。ここから向かう予定としていたのは 安家森 です。車道では下の地図の bP2になります。
 
 安家川沿いに上流へ向かおうとしたところ、軽トラックの対向車のおっちゃんに行く先を聞かれ、安家森と答えたところ、まだ雪が残っていて通れないよ ということでした。そういえば、いつも来る季節は6月の牧場祭りがおこなわれるころです。今回は一か月早く、1200mも標高のある安家森の風下では積雪が尋常ではなく、通れないのも当たり前です。下の地図ではbP0と12の間の点線です。
 やむなく奥岩泉隧道を引き返し、国境峠を超え、bP1の五日市小学校の所を曲がって目指します。右はその途中にある 袖山トンネル です。ここも辺鄙なところですが立派なトンネルが作られています。
 大きく迂回して安家森の登山口にある、トイレ付きの駐車場にやってきました。まだ観光シーズには入っていないので、入口は閉鎖されていますが、管理・作業に来た方でしょうか、バイクが一台とまっていました。
 人里離れたところで、景観や自然を楽しむことで、皆さんに来てもらおうとするためには、駐車場とトイレがセットで必要です。 某市で、風力発電(ウィンドファーム)ができたのを機に、観光需要も期待できます… との政策を掲げた課がありましたが、トイレも作る気が無いのでは無理ではないかと申し上げたことがありました。 その点、葛巻町は小さい所なのにりっぱです。
 右写真は安家森への歩道入口ですが、ご覧の通り残雪が多く、天気も良くないので登頂はあきらめて、袖山高原レストハウスの方へ回ってみます。
   入り口シャッターに張り紙があったので、もしかして完全閉鎖か?と心配しましたが、コロナ騒ぎで、冬季閉鎖からの開館予定を、4月の末から6月当初に変更するとのことでした。 残雪の遊歩道を歩いて 袖山の展望台 へ上ってみました(下写真)。広がる牧場地帯を眺めると、何かが足りません。 左下写真は2002年の6月撮影ですが、岩手県内でも早く立ち上がった風力発電用の風車、たしか400kw×3基だったはずですが、無くなっていました。葛巻町内のほかの高原には、主流となった1000kw以上の風車群が並んでいますので、一つの役割を終えたと言えるのかもしれません。
 今回は北上高地の各所、山奥に拓かれたトンネルや峠を巡る旅でした。やはり次回は6月頃に来ようと思います。
 



3.みちのく潮風トレイルのつまみ食い  取材は2020年4月上旬
 割合最近出来た、というか既存のルートを繋ぎ合わせて指定された部分が多いようですが、青森の八戸から福島の相馬までを一筆で結ぶ,、みちのく潮風トレイルが開通しました。みちのく潮風トレイルのホームページはこちらにあります。延長1000kmを越える全線を踏破することなどは、私のコンセプトからするととても行いそうにありませんが、一部をつまみ食い、あるいは虫食いで行ってみた場所の報告です。

 潮風トレイルという名称の通り、多くの区間は、浜辺の波打ち際に拓かれています。私の住む三陸沿岸でも険しい岬と入江の断崖を縫うように点在する集落を繋いだ道があります。その道も先の津波で多くの部分が破壊され、原形復旧されたところと、別ルートで再建された所があります。右のトンネルと流失した橋は「震災遺構」となるものです。
 国土地理院地形図リンクはこちら
 Google写真リンクはこちら
 陸中海岸の中でも私の好きなポイントの一つになる真崎は、以前は浄土ヶ浜まで行く定期観光船の発着所になっていて、車は陸送に頼んで利用したこともあります。現在は漁港だけがあります。そこから北に隣接して沼の浜海水浴場(左写真)があります。
 沼の浜から海岸沿いに北上するルートにあった上写真の道は今は復旧を諦めてこちらの地図の「太平洋ロフト」の右上のあたりの稜線を超える道が新たに開通して、北上ルートになっています。
 新しい迂回道路を経由して、先ほどのトンネルの北側にやってきました(上写真)。道は見る影もありません。床盤の残骸があります。
 Googleマップ写真はこちら
 地理院地図の位置はこちら
 地理地図では既に付近のトンネルなどは記載対象から外れてしまっているようですが、現地には歩行すれば通り抜け可能な隧道が残っています。廃道を専門に探検するサイトがあって、私も好きなのですが、ここも殿堂入りするかもしれません。
この部分の「みちのく潮風トレイル」ガイドマップはこちらにあります。図の下の方の真崎付近を拡大してご覧ください。被災前の道は海沿いに黒色で描かれていますが、高所を迂回するのがトレイルのルートになっているようです。旧道は道路メンテナンスの対象から外れているので、通行は自己責任になりそうです。
 2020年春〜夏時点で三陸自動車道の工事に伴って臨時店舗で営業中の道の駅 たのはた に隣接する広場にやってきました。思惟の大橋のたもとに、リンク先の写真にもありますように結構な規模と設備の野外施設があります。
 昔はこの橋が無かったので谷沿いに延々と曲がりくねった道を進んだのでした。現在は並行してもう一本の高規格道用の橋が工事中です。 公園とキャンプ場と車中泊を、有料で良いのでうまく融合させた施設があればいいのにと、このようなところに来ると思います。
 海辺の三陸鉄道沿線にやってきました。右は島越(しまのこし)駅です。カルボナードという愛称がついています。少し前に薬師丸ひろ子さんが来てコンサートをおこなったようです。ふだんはお客さんがたくさん来るところでは無いようですが、この地域の津波からの復興の象徴的な感じです。
 螺旋階段で二階に上ると回廊の展望スペースもあり、一階には展示室があり、復興支援を中心とした寄せ書きや、この駅に実際に三鉄でやって来た白鳳と志村けんの顔出し看板があります。この取材の数日前に無くなった志村けんとの写真は貴重なショットが撮れます。ですがこのあとコロナウィルス感染防止のためこの看板は公開を中止しています。
 一階には他に土産物や紹介コーナー、駅務のスペースがあります。おばちゃん(失礼!)が一人いますが、駅長さんでいらっしゃいます。
 上は売店・休憩所、右上は駅のホームに至る通路、右はたまたま通りかかった宮古方面からの下り列車です。 

 再び海辺に出て、みちのく潮風トレイルの一部を目指します。
 地形図で見ると波打ち際を通るルートの入口(南下方向の場合)にやってきました。ルートマップでは「切牛市街地図」のあたりです。
 波打ち際は地盤沈下のため通過困難となっていて、多分潮位が高い時には泳ぐ必要がありそうです。そのような場所には迂回コースが設けられていて、入口に上写真のような道標があります。
 仮にこの部分を通行できれば隧道もあったりして楽しそうです。
 潮風トレイルとエリアが一部重複する、三陸ジオパークには、鉱山関係の構成要素もあります。釜石や野田玉川や久慈など何か所もあるのですが、設備の一部が残存しているこの田老鉱山はリストアップされていないようです。場所はこちらになります。

 この項の取材が4月ですので、記入時点での植物相と違いがありますことをご了承ください。ですがそのために木立の間に望む建物等は見えやすくなっています。
 最盛期には1800人が鉱山敷地内に居住したものの、1971年に閉山となり、現在は大学の敷地として活用されているようです。途中までは未舗装路を進んで行くことに問題は無いようです。上水道の取水口でもあるのか、工事中の道端には迂回配管が設けられていました。 国土地理院の地形図名称としても田老鉱山として載っていましたので、いつかは現物を見たいと思っていたのですが、既に機能を停止してから50年近くが経過していました。
 鉱山があれば、付帯設備として鉱石の不要な部分を廃棄する場所や、排水処理設備が必要となりますので、上写真のような水面を持った敷地や処理設備建屋がありました。

 そして人々が居住した社宅も意外に壊れないで残っています。 一時は日本の産業にそれなりの貢献をした場所を訪れて確認することが出来たことは収穫でした。
この項 つづく・・・

4.タブの大島
 タブの大島は、岩手県山田町、船越湾の沖にある無人島です。名称はタブの木の自生北限地であることによるようです。同町のHPには、R45沿いの四十八坂展望台から眺めることが出来ます・・・とあります。
 最寄りの陸地である船越半島からは300m余りですが、この展望台からは3.5kmほどの距離になります。
 船越半島に以前あった国民宿舎「タブの木荘」のあたりからは間近にみえます。今回はドローンの遠距離運用試験も兼ねて、R45近くから観察に向かいました。島の南端には灯台も立っていて、その周辺は植生の無い「千畳敷」と呼ばれる岩盤が広がっています。
 六十年近く前の小さかった頃の記憶になりますが、船で島に渡り、この千畳敷を見たことがあります。現在は観光船定期航路は無いとHPにありますが、当時は一般客を乗せる船が不定期にしてもあったようです。因みに田の浜から荒神海水浴場までも船が出ていました。
 島の太平洋・外海に面した側には洞窟状の入り江があったりします。
 右写真は島の北側から南方向を望んだところですが、遠くに釜石市の御箱崎が見えます。島の南北の長さは900mほどあります。
 下写真は島の西側(外海から隠れた側)ですが、やはり海の荒れ具合はよほど少なく海岸段丘もありません。この辺りの海砂は白っぽいので、海の碧がとてもきれいに透けて見えます。

 動画はこちらからご覧ください
つづく・・・